shinkanaokadanchi_renovation15ていねいに愛着を持って、長く住み続けられる家を提供します。

近年、住まいとしての団地のよさが見直されています。再活用手段としての団地リノベーションが注目され、MUJI×URなど大手による取り組みも広まっています。2013年には、分譲団地を購入してリノベーションした事例を集めた「団地リノベ暮らし」が出版されました。住環境のゆたかさと、手ごろな価格感から「団地を購入してリノベーション」することが、快適な住まいづくりの選択肢として認知されつつあります。

先行事例が持つ課題

ただ残念なことに先行する事例の多くは、団地を「今の暮らし方や嗜好に合わないもの」とネガティブにとらえ、間取りや仕上げを刷新しています。その過程で、懐かしさや、時間を経た風合い、風通しのよさ、ふすまを利用した自由な空間づくりなど、団地がもともと持っている良さが失われているように感じます。

建物の持ち味を根底から捨て去ってしまうリノベーションは、「リノベーションの皮をかぶったスクラップ&ビルド」と言えるでしょう。人口が減少し部屋が余る時代においては、ただ新築のような綺麗なリノベーションをしても、本物の新築マンションにはかないません。本来の意味でストックを活用するためには「悪いからなおす」でのはなく、「いいものだから使い続けたい」という感覚を持ったリノベーションが求められます。

「団地らしく」仕立て直す家

しんかな団地リペアプロジェクトでは、今の時代だからこそあえて「団地らしく」改装することを意識しました。間取りをなるべく替えず、仕上げや金具も使えるものはそのまま使い、痛んでいるものについてはオリジナルに近いものを選びました。新しいように取り繕うリフォームでもなく、がらりと作り変えてしまうリノベーションでもなく、よいところを生かして仕立て直す「リペア」の感覚です。

無垢材のフローリング、壁や天井のペンキ仕上げ、塗装仕上げの扉は、傷んでも塗りなおしたり削ったりすることで比較的手軽に補修ができます。現在主流となっている新建材で作られたものであれば、傷みがひどくなった時にはまるごと取り替える必要があり、工事も金額も大掛かりになってしまいます。少しずつ手直しをして、長い年月に積み重ねられた補修の跡は、年輪のように住まいの歴史を語るでしょう。

完成してからも、住み手がリペアしながら住み続ける住まい。「いい団地だから、なおして暮らす」営みを長く続ける住まいになればと願います。

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